高血圧

高血圧について

血管にかかる圧力が常に高い状態であり、動脈血管に大きな負担がかかり続けるため、血管が分厚くなったり、硬くなったりする動脈硬化を進行させます。脳卒中、心筋梗塞、腎臓病などの発症リスクが高くなります。

高血圧の原因

心臓から動脈に送り出される血液の勢いが強い場合だけでなく、血管の柔軟性が低いと血液の勢いが強くなっても血管がふくらまないため血管にかかる圧力が高くなり高血圧を発症させます。過剰な塩分摂取や塩分を取り込みやすい体質の場合も高血圧の発症リスクが高くなります。また、喫煙は末梢血管を収縮させるため、高血圧の原因になります。

高血圧が続くと動脈硬化の発症・進行リスクが高くなり、血管が硬くなってますます血圧が高くなってしまいます。また、高血圧・糖尿病・脂質異常症の診断に至らなくても、それぞれの数値が複数グレーゾーンにあって、内臓脂肪型の肥満をともなうメタボリックシンドロームの場合には、特に動脈硬化の進行リスクが高くなります。

高血圧が引き起こす疾患

高血圧が続くと動脈の血管に負担をかけ続けるため、動脈硬化を進行させてしまいます。大量の血液循環を必要とする脳・心臓・腎臓は特に高血圧のダメージを受けやすい傾向があります。高血圧にはさまざまな合併症が存在し、命に直接関わるものも少なくありません。また、命が助かった場合でも重篤な後遺症を残し、健康寿命を短くしてしまう可能性もあります。特に脳出血はほとんどが高血圧によって起こっているとされているため、注意が必要です。

脳出血、脳梗塞、くも膜下出血
心臓 うっ血性心不全、冠状動脈硬化、心肥大、心筋梗塞、狭心症
腎臓 腎硬化症、腎不全
血管 大動脈瘤、閉塞性動脈硬化症

血圧の基準値

他の疾患の有無やその状態、全身状態、年齢などによって血圧の目標値は変わってきます。特に糖尿病や脂質異常症、腎臓疾患、などがある場合には厳しいコントロールが必要になります。生活習慣の改善を中心にした治療で血圧の改善や内服薬の減量ができる場合を多く経験します。

目安となる血圧は下記の通りです

※2019年版「高血圧治療ガイドライン」(日本高血圧学会)

2種類の数字は、血圧を計測した際に表示される収縮期と拡張期の血圧です。心臓が一番縮まった状態が収縮期で高い血圧になります、収縮期は心臓が一番ゆるんでいる状態で、最も低い血圧になります。高血圧はⅠ度・Ⅱ度・Ⅲ度の3段階に分けられ、それぞれ適した治療内容が異なります。

成人の正常血圧 120/80㎜Hg未満
高血圧 140/90㎜Hg以上
正常血圧 120~129
/80未満㎜Hg
正常高血圧 130~139
/80~89㎜Hg
Ⅰ度高血圧 140~159
/90~99㎜Hg
Ⅱ度高血圧 160~179
/100~109㎜Hg
Ⅲ度高血圧 180
/110㎜Hg以上

ご自宅でも血圧を測りましょう

血圧は緊張などでも大きく変化します。一般的に、診療室で測った数値は高く出やすい傾向にあり、リラックスした状態で計測できるご自宅で測った場合は低くなる傾向があります。ご自宅で計測した場合の方がより正確な血圧になるとされていて、家庭血圧が診断では優先されます。
血圧計は家電販売店などで簡単に入手できますので、当院では患者さんにご自宅でもこまめな計測と記録をおすすめしています。
ご自宅で継続して計測した場合、ちょっとした変化にも気付きやすくなるため、当院では高血圧と診断された患者さんには血圧手帳をお渡ししています。こうした記録を参考にすることで、状態にきめ細かく合わせた治療が可能になります。

高血圧の治療

高血圧の治療食事療法と運動療法を行います。それで十分な効果を得られない場合には、薬物療法を加えた治療が必要です。同じ生活習慣で発症・悪化しやすい他の病気の予防や進行防止にも生活習慣の改善が役立つことが多くいため、薬物療法を開始した場合も生活習慣の改善は不可欠です。重要なのは継続することですから、当院では無理なく行うことができてストレスの少ない方法を患者さんと一緒に考えています。管理栄養士による栄養指導も行っていますし、食の楽しみを損ねることなくQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の改善につながる治療を心がけています。

生活習慣の改善

減塩

塩分を制限すると血圧の改善につながるケースが多いことから、当院では減塩をおすすめしています。塩分摂取量は、6g未満が目標値で、素材にも塩分が含まれていますので、調味料として使用できる目安の塩分は1日に4gほどだと思われます。香味野菜やハーブ、ゆずやレモンなどの酸味、鰹節や昆布などのうまみ成分を使うことで、物足りなさを感じにくくなり減塩方向になります。

日本人は過剰な塩分摂取をしている方が多いため、減塩は効果を得やすい対策のひとつです。減塩をはじめてしばらくは物足りない感覚を覚える方もいらっしゃいますが、比較的短期間で慣れて素材の味をはっきり感じられるようになるケースもよくあります。注意したいのは外食や会食の際の塩分ですが、それについても管理栄養士が具体的なアドバイスをさしあげています。

体重制限

適正体重を維持することで高血圧だけでなく、他の生活習慣病などの発症や進行の予防にもつながります。なお、適正体重(標準体重)・肥満・痩せ過ぎを判断する場合には、身長と体重によって計算できる体格指数(BMI)を用います。

体格指数(BMI)=体重(kg)
÷{身長(m)×身長(m)}
体格指数
(BMI)
22
標準体重
体格指数
(BMI)
25以上
肥満症
体格指数
(BMI)
18.5以下
痩せ過ぎ

内臓脂肪型の肥満では、高血圧、脂質異常症、糖尿病を発症しやすくなると考えられています。また、内臓脂肪型の肥満に血圧、脂質、血糖のどれか2つ以上が高値を示すメタボリックシンドロームの場合には、動脈硬化が進行しやすいという傾向があります。急激な体重減少はリバウンドしやすいため、適正なカロリー摂取による自然な体重減少をおすすめしています。

飲酒

厚生労働省が提示している節度ある飲酒とは、1日平均純アルコールで20 g程度であり、1日に日本酒なら1合、ビールなら500㏄、酎ハイ(7%)350 ml 1缶です。重要なのはリスクや他の基礎疾患、年齢、体質などを考慮して決める必要があります。

運動

血圧や血糖値が高すぎる場合は運動が逆効果になる可能性があります。医師と相談して適切な運動内容や頻度、時間などを決めてください。一般的には、軽い有酸素運動を30分程度、週に3回以上行うなどの内容で、激しい運動は必要ありません。肥満している、膝や腰に疾患がある場合には水泳など関節に負担がかかりにくい運動をおすすめしています。

禁煙

喫煙すると末梢血管が収縮して血圧が上昇し、動脈硬化リスクが上昇してしまいます。喫煙を続けていると食事療法や運動療法を厳しく行っても効果を得られない可能性があります。他の幅広い疾患の発症リスクを下げるためにも禁煙は有効です。

薬物療法

食事療法や運動療法で血圧が十分に下がらない場合に必要になります。血圧を下げる効果のある薬剤にはさまざまなものがありますので、患者さんの状態や年齢、発症リスクの高い合併症、既往症や服薬している薬、ライフスタイル、服用タイミングなどに合わせた処方を行っています。主な薬剤には、血管拡張薬、血管の緊張を緩和させる神経遮断薬、尿量を増やして循環血液量を減らす利尿剤、ホルモンに作用するレニン・アンギオテンシン系薬などがあります。

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