増加傾向にある糖尿病
日本人の5人に一人は糖尿病もしくはその予備軍といわれ、この20年間は増加傾向にあります。
糖尿病は血液中のブドウ糖濃度(血糖値)が高い状態が続く疾患で、血糖値を調整するインスリンというホルモンの作用が弱くなって生じています。
食事、運動不足、肥満などの生活習慣によって発症するケースがほとんどを占めていて、基本的に無症状のまま進行します。
小さな血管がダメージを受け続けると神経・眼・腎臓などに深刻な合併症を起こすことがあり、大きな血管の動脈硬化が進行すると心筋梗塞・脳梗塞・足の痛みや潰瘍などの発症リスクも高くなります。
糖尿病の症状
- のどが渇く、摂取水分量が増えた
- 頻尿、尿量が増えた
- 尿の匂いが気になる
- 徐々に太ってきた
- 食べているのに痩せる
- 倦怠感、疲れやすい
- 足がむくむ
- 肌の乾燥
- 手足の痺れ
- 立ちくらみ、めまい
- 傷の治りが悪い
- 感覚鈍麻
- 視力が落ちた
など
糖尿病リスクが高い方
- 40歳以上
- 肥満
- 野菜や海草類をあまり食べない
- 朝食を食べない
- 大食い・早食い
- 揚げ物など油分が多いものをよく食べる
- アルコールをよく飲む
- 清涼飲料水や甘いコーヒーなどをよく飲む
- おやつで甘いものをよく食べる
- 運動不足
- ストレスをためやすい
- 家族に糖尿病の方がいる
- 妊娠中に血糖値の高さを指摘されたことがある
糖尿病の種類
I、1型糖尿病
何らかの原因で膵臓のインスリンを作る細胞が破壊され、インスリン分泌量が不足して発症する糖尿病です。
Ⅱ、2型糖尿病
インスリンが出にくい体質や食生活の偏り、運動不足といった生活習慣など複数の要因によってインスリンの働きが弱くなり慢性の高血糖状態に至る代謝疾患です。日本ではこの2型糖尿病が糖尿病全体の約95%以上と言われています。
Ⅲ、その他の特定の機序、疾患よるもの
Ⅳ、妊娠糖尿病
があります
インスリンについて
インスリンは膵臓から分泌されるホルモンです。血糖値が上がり過ぎないようにインスリン分泌量は調整されています。血液中のブドウ糖を細胞に送りこむ・脂肪やグリコーゲンに変える役割も担っています。血糖値を下げることができる唯一のホルモンであり、インスリン分泌量が減ったり働きが悪くなると高血糖になってしまいます
糖尿病の三大合併症
糖尿病の高血糖は、血管に負担がかかります。動脈硬化のリスクだけでなく、毛細血管にも負担がかかるため、神経や眼の網膜、腎臓などにダメージを起こすことがあります。特に、糖尿病性神経障害、糖尿病網膜症、糖尿病性腎症は糖尿病の三大合併症と呼ばれています。
糖尿病合併症は糖尿病でなければ発症しない疾患ですが、高血圧や脂質異常症を合併していると悪化させやすいことがわかっています。
こうした糖尿病合併症もかなり進行しないと自覚症状に乏しいことが多いため、定期的な診察・検査が不可欠です。
三大合併症は糖尿病の治療を続けて、血糖値をコントロールすることで発症・進行を予防できる場合がほとんどです。
糖尿病神経障害
比較的早期に自覚症状が現れやすい合併症です。主な症状には、手足の痺れ、感覚鈍麻、足がよくつる、ケガなどの治りが遅いなどがあります。進行すると自律神経障害によって、便秘、めまい、立ちくらみ、勃起不全などを起こすこともあります。痛みをほとんど感じないことにより、些細なケガをきっかけに傷口が悪化し潰瘍や壊疽、足の切断などにつながるケースもあります。
当院では糖尿病の方に医師が必要と判断した場合、足のケアについてご相談可能なフットケア外来を行っております。糖尿病性神経障害が疑われる症状がある場合、ご相談ください。
糖尿病網膜症
網膜にある毛細血管がダメージを受け、眼底出血・硝子体出血・網膜剥離などを起こして失明に至ることもあります。日本の中途失明の原因では、緑内障に次いで糖尿病網膜症が長年2位を占めています。進行するまで自覚症状がほとんどありませんので、糖尿病と診断されたら定期的に眼科を受診して検診を受ける必要があります。
糖尿病腎症
腎臓が血液をろ過する糸球体という部分の毛細血管が障害されて、腎機能低下を起こします。日本では、人工透析を受ける原因疾患の1位が糖尿病性腎症です。進行する前に発見するためには、定期的に検査を受けてしっかりチェックする必要があります。
大血管合併症(動脈硬化)
糖尿病で高血糖が続くと全身の動脈硬化が進行して、脳梗塞、脳出血、心筋梗塞、下肢閉塞性動脈硬化症をはじめとする深刻な疾患を起こすリスクが高くなります。こうした疾患は発作を起こしてしまうと命に関わる可能性もあります。特に高血圧や脂質異常症などを合併していると、それぞれの数値がそれほど悪くなくても動脈硬化の進行が早くなってしまうため、厳格なコントロールが必要です。
糖尿病の検査
血液検査で、血糖値・ヘモグロビンA1c(HbA1c)値を測定します。血糖値は食事などの影響を受けて大きく変動しますが、ヘモグロビンA1c(HbA1c)値は過去1~2ヶ月の血糖値を反映するため、診療では主にこの数値を参考に治療を進めます。当院では、ヘモグロビンA1c(HbA1c)値の結果を迅速に得られる検査機器を導入していますので、患者さんの状態に合わせたより適切な治療を行うことができます。
なお初診の方やグレーゾーンの境界型糖尿病の場合、より正確な診断のために経口ブドウ糖負荷試験による診断確定が必要になることもあります。
特定健診(メタボ健診)を必ず受けましょう
40~74歳の方の全員が対象になっている特定健診(メタボ健診)には、糖尿病検査も含まれていますので、毎年、必ず受けるようにしてください。また、健康診断や人間ドックで血糖値が高い・尿に糖が出ているなどの指摘を受けた場合には、必ず受診するようにしてください。
糖尿病の治療法
深刻な合併症を起こさないために、早期発見、そして治療の継続が重要です。
軽度の場合には、生活習慣を見直して、食事療法、運動療法によって血糖値改善につなげます。早期の段階であれば、ストレスなく行える範囲の改善で血糖値をコントロールできる可能性が高まります。血糖値をコントロールできれば、糖尿病の進行や合併症の発症を防ぐことができます。食事療法や運動療法で十分な血糖値改善ができない場合には薬物療法を行います。
当院では、患者さんの状態、ライフスタイルなどに合わせた治療を心がけていますので、気になることがありましたらご相談ください。
食事療法
身長から導き出した適正体重をキープできるよう、カロリーコントロールを行います。肥満があると内臓脂肪が増加し、インスリン作用が弱くなり、血糖コントロールが悪化します。急激に体重を落とすとリバウンドしやすいため、無理のない範囲で体重が減っていければと考えます。
運動療法
習慣的に運動を続けることで、血糖値の低下とインスリン作用改善につながります。激しい運動は必要ありませんので、有酸素運動は週3回以上、運動をしない日が2日間以上続かないように行い、レジスタンス運動は連続しない日程で週に2から3回行うことがそれぞれすすめられ、禁忌でなければ両方を行うようにしてください。なお、他の疾患の有無や状態によって適した運動の内容や量は変わってきますので、医師と相談して行うようにしてください。また、高血糖の状況では、運動が悪影響を及ぼす場合があります。
薬物療法
血糖降下薬の内服薬や注射薬による治療を行います。インスリン注射は1型糖尿病の治療には必須です。また、インスリン注射によってインスリンを補うことで膵臓からのインスリン分泌量を低下させ、インスリン分泌細胞を休ませる効果が期待できます。